仙台高等裁判所 昭和29年(う)19号 判決
刑法第二百三十八条は窃盗既遂であることを必要とせず其の未遂の場合と雖も苟も窃盗の現場において逮捕を免れ若くは罪跡を煙滅する為め暴行又は脅迫を為したときは強盗を以つて論ずる法意であり、只窃盗犯人が未だ財物を得ざるに先だち逮捕を免るるため暴行脅迫を為した場合に於ては同条の強盗未遂を以て論ずべく、その既遂を以て論ずべきものではない。而して、強盗犯人にして其の現行中、人を傷害した以上は窃盗行為そのものが既遂であろうと未遂であろうとを問わず同条第二百四十条前段の強盗傷人の既遂を以て論ずべきものである。従つて被告人が窃盗に着手した後発見され、逮捕を免れるため、その場で人を傷害した旨の原判示第二の事実に対し、刑法第二百四十条前段を適用処断した原判決は正当で、原判決には所論の如き事実誤認擬律錯誤の違法はない。